残業・残業代問題でお困りの経営者・人事労務ご担当者様へ  〜ここに注意!労務管理の現場で見かける残業対策の落とし穴〜

《《 経営者のための残業対策講座 》》

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当サイトでは、サービス残業残業代の支払い労基署等による指導監督その他残業および残業代の問題でお困りの経営者様および人事労務ご担当者様にご覧頂くことを念頭に、企業の顧問社会保険労務士としての視点から、会社として最小限押さえておくべき残業・残業代に関する知識や具体的対応策について簡潔に記載し、解説を試みています。日常の残業・残業代管理にお役立ていただければ幸いです。


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○企業の顧問社労士として一言 ○古くて新しい残業問題 ○負い目のない残業対策とは
○残業・残業代に関する基礎知識 ○残業・残業代の例外 ○違反した場合のペナルティ ○残業に潜むもう一つのリスク
○残業・残業代Q&A ○残業対策コンサルティング案内 ○中村亨事務所ホームページ ○サイトマップ

第8章 よくある残業・残業代に関するQ&A

残業や残業代に関して、良くお受けするご質問について、Q&A方式で解説しました。

※なお、ここでいう残業や残業代とは特に断りのない限り法外残業(代)のことをいいます。

Q1:

残業の単価は、基本給だけをもとに決めても良いですか?

A1:

残業代単価の計算方法は法外残業か、法内残業か、で異なります。

法外残業の場合には、残業単価を計算する場合には家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1ヶ月を超えるごとに支払われる賃金以外は全て含めて計算することが労基法で義務付けられています。

したがって基本給だけをもとに残業単価を計算するといった方法は認められていません。

他方、法内残業単価の計算については、同様の方法の他、就業規則等で異なった定めをしていればそれによることが可能です。

したがって、就業規則等で基本給のみをもとに単価を計算するとした場合には、その額が最低賃金を下回っていない限り労基法上違反となることはありません。


Q2:

残業代は定額制や上限を設けても良いですか?

A2:

残業代は、管理監督者や裁量労働制の対象者など適用除外とされる労働者を除いて、残業時間に応じた残業代を支払うことが義務付けられています。

したがって、設問のように実際の残業時間の長短に関係なく定額制としたり、「1ヶ月につき20時間まで」といったように上限を設けることは違法とされます。

ただし、定額制であっても実際の残業代がその範囲内でおさまっている場合や、超えた部分の差額については、別途支払うこととされている場合には問題ありません。


Q3:

年俸制にすれば残業代を支払わなくとも良いのですか?

A3:

前述のように、法律上、残業代の適用を除外される労働者というのはごく限られており、年俸制だからといって残業代を支払わなくとも良いというわけではありません。

したがって、年俸制といえども、こうした労働者に該当しない限り、原則どおり残業代を支払う必要があります。

ただし、残業代の対象とならない労働者についても、あらかじめ予想される残業代を含めて給与額を決定し、支給するような場合には、別途残業代を支払うケースは事実上限られてくるので、形式的には年俸制に近い形態を取ることは可能です。

しかし、この場合でも、年俸のうち残業代に相当する部分は客観的にしておく必要があり、また実際の残業代がこれを上回った場合にはその差額は別途支払う必要があります。


Q4:

本人が勝手にやった残業でも残業代は必要ですか?

A4:

本人が自主的に行った残業といえども、会社がこれを黙認していたり、しないと何らかの不利益処分が課されるなど間接的に強制されるような場合には、原則として会社の命令による残業と同様に扱われ、所定の残業代を支払う必要があります。

他方、残業を行う業務上の必要性もなく、会社も明確にこれを認めていないのに、本人が独断で行った残業については、残業代の対象とはならず、その支払いも不要とするのが基本的な法的見解です。


Q5:

営業職には残業代は不要ですか?

A5:

営業職についても、年俸制と同様、残業代の適用を除外される労働者というのはごく限られており、営業職というだけで当然に残業代の支払いが不要となるわけではありません。

したがって、労基法上の管理監督者や事、業場外のみなし労働時間制の対象者など残業代の適用除外に該当しない限り、残業代を支払う必要があります。


Q6:

管理職には残業代は不要と聞きましたが、全員を管理職にしたらどうなりますか?

A6:

労基法で定める残業代の適用を除外される管理監督者に該当するか否かは、あくまで職制上の地位や権限が経営者と一体的な地位にあり、出退勤についても十分な裁量を有し、給与等の処遇についても一般労働者等に比較して優遇されている、といった実態の有無を基準に判断されます。

したがって、こうした実態を伴わない単なる名目だけの管理職については、原則どおり残業代の支給対象となります。


Q7:

裁量で業務をさせている社員がいますが、裁量労働制は適用されますか?

A7:
裁量労働制についても、営業職や年俸制と同様、ソフトウェア開発やデザイナーなど特定の専門的職種や、企画職等一定の業務を行う者等残業代の適用を除外される労働者というのはごく限られており、自己の裁量で業務を行っている、というだけで当然に残業代の支払いが不要となるわけではありません。

したがって、労基法上の管理監督者や裁量労働制の対象者など残業代の適用除外に該当しない限り、残業代を支払う必要があります。


Q8:

「残業代なし」の条件で採用した社員から「残業代を支払ってほしい」といわれたのですが。

A8:

労基法で定める残業代の支払に関する規定は「強行規定」と呼ばれ、労使間の合意の有無に関わらず罰則付きで会社に支払を義務付けるものです。

したがって、法律上残業代が除外されたり、一定額の残業代を含めて支給していることが明らかである等一定の場合を除き、設問にあるような約束をしても残業を実際に行った場合には、原則どおり残業代を支払う必要があります。


Q9:

当社では、その日ごとの15分未満の残業は切り捨てて計算しています。問題ありますか。

A9:

残業代の計算については、実働時間で行うのが原則です。

したがって、設問のような計算方法は認められていません。

また、切り捨てられた額については「残業代の未払い分」として2年間は支払義務が残ることとなります。

ただし、月の残業代の合計額について、便宜上、30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げる方法は労働者に与える不利益が少ないので認められています。


Q10:

遅刻した労働者が、その分を補うために行った残業についても2割5分増で支払わなければなりませんか?

A10:

2割5分増しの残業代を必要とする法外残業はあくまで実働時間を基準とします。

したがって、特別な定めがある場合は別として、遅刻して、その分残業をしたとしても、法定労働時間内で収まっている限り2割5分増とする必要はありません。


Q11:

残業代さえ払えば、残業をいくらでもやってもらっても構わないですか?

A11:

残業の多くは雇用契約上、例外的な業務であり、法外残業にいたっては元々労基法で禁止されているものです。

したがって、残業をしてもらうためには、その命令自体があくまで合法的なものである必要があります。

その判断は、残業代の支払いの有無以外にも、就業規則等にその記載がされているか、36協定の締結や届出がされているか、残業時間が36協定の範囲内に収まっているか、いやがらせなど残業命令に不当な目的や動機がないか、本人に残業に応じられない合理的な理由があるか、といった点から総合的に判断されます。

したがって、ご質問のように残業代を払うからといって、それだけで残業をさせることができるわけではなく、他の条件も満たしている必要があります。

ところで、中には残業代を欲しいがために、こうした条件を満たしていなくとも自ら進んで残業に応じてくれる労働者がいることも事実です。

こうした場合には、労使の利害が一致するので、仮に違法な残業であってもトラブルになることは少なく、表面化することもないので、結果的には、ご質問のようなケースが現実となってしまうことは少なくありません。

しかしながら、このように「表ざた」にならなかった場合でも、会社は残業代の支払いとは別の責任を負っていることに注意する必要があります。

すなわち、長時間残業により労働者が健康を害した場合には、会社が労働者に対して負っている「安全配慮義務」に違反したとされ、損害賠償責任を問われることもある、ということです。

この責任は残業代の支払いとは全く関係のないもので、いくら残業代を払ったからといって免責されるものではなく、しかもその額は高額となることも決して少なくありません。

そういう意味で、労働者に残業をさせる場合には、単に残業や残業代についてのみではなく、健康管理の点からの配慮しておく必要があるといえます。

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